検察に告ぐ
平成20年8月23日
医師 八木 謙
医師法21条を振りかざし医師を罪に陥れようとする時代は終わった。考えてもみよ、これは医師が診療行為中に犯したミスを追及するに過ぎない。医師に殺意がなくて患者が死んでしまった、そういう過失致死が立証出来るか否かそれのみに有効な手段であろう。これに頼っていては計画的犯罪、殺す意思があり医療機関内で行われた犯罪は見逃してしまうことになる。医師が計画的に行なった殺人を暴く為には何が必要か。異状死届けが出されていようが出されていなかろうが、プロの感で臭いと感じたらさぐりを入れなくてはならない。
今建設中の医療事故調査委員会など本物の犯罪の立証に関しては無力であろう。警察はこれを信用すべきではない。犯罪に関しては犯罪捜査のプロがその任にあたるべきである。過失致死という事象のみに限定した捜査でなく、病死として届けられた死体でも犯罪の疑いのあるものには手をのばす。こうした姿勢がなくては社会に対する責務が果たせているとは言えないのである。
手術に失敗したら懲役1年。患者家族の心情を慮り検察は医師に刑を求刑する。刑が確定し執行される事に何の意味があるだろうか。法の解釈をめぐり法廷で論争することに何の意味があるだろうか。異状死という用語の定義など言葉の遊びに見えてくる。
新聞など医療界の聖域が守られたと報道しているが、それは違う。医療施設であろうと犯罪が疑われる場所には踏み込んで行かなくてはならない。ただ捜査起訴において医師法21条違反を旗頭にするのは稚拙すぎるのである。