入院中に思ったこと

八木 謙
2026/8/18

 今回、岩国国病に10日間入院した。入院中に思ったこと。
 ここのスタッフは優秀で訓練が行き届いている。掃除のおばさんだって自分の仕事はちゃんとこなしている。
スタッフはいいのだが法律関係について感じたことが2つある。
 1つは壁に貼ってある患者の権利という文章だ。患者の権利とは何だ。文章を読んでみるとここに書いてあるのは憲法にいう基本的人権に他ならない。小室直樹著痛快憲法学という本を入院中読んでいた。これは憲法の条文を個々に検索してゆくのではなく憲法というものを俯瞰的にみてゆくという本だ。20年前に書かれた。この中に子供の人権を守れということをそのころマスコミが盛んに言っていたことが書いてあった。著者はこの用語の使い方がおかしいという。どんな凶悪な犯罪を犯しても子供に死刑は科せられない。これは子供の特権である。患者の特権について考えた。特室に入る。別料金を払いここに入るとそこのトイレ、シャワー電話はその人の個別に使用できる。これはその人の特権である。ある種の疾患に認定されるとその治療は無料となる、これはその人の特権である。妊婦は妊婦検診、出産は無料となり、妊娠が分かったときには5万円の支給がある。これは妊婦の特権である。さて患者の権利とは何だ。風邪をひいただけでもそれは疾患であり、その人は患者である。その人には何の特別な権利も与えられない。その人にあるのは憲法13条にある生命、自由、自分で稼いだ財産の自己決定権の保証である。親が子供に帰宅の時間制限をする。夜の外出は禁じる。これは子供の自由を束縛していることになるか。会社の上司が反抗的な部下にやかましい黙れ、というのは部下の発言の自由を侵してることになるか。違う。これらは憲法とは何の関係もない。憲法とは国家を縛るものである。この病院の壁に書いてある患者の権利を守るとはこの国に生まれた人に平等に与えられる憲法で保障された権利である。自明のことを今更壁に書く必要もない。
 もう1つは入院して数日後に渡された私の検査データだが、その下にこれは個人情報ですからこれの漏洩には注意して下さいとある。個人情報保護法より以前に医師、弁護士には刑法上の守秘義務がある。これを犯すと6か月以内の懲役または10万円以下の罰金だ。一方、個人情報保護法はこれを破っても勧告だけである。医療スタッフが患者の秘密を漏らすと、医師は監督不行き届きで刑を受ける。懲役にするか罰金にするかは裁判長の決めることだ。では医師が懲役刑になった場合、患者の秘密を洩らした医療スタッフは個人情報保護法違反で勧告されるだけで済むか。そうではない。自分のせいで医師を懲役刑に処したのであるから懲戒免職にされても文句は言えない。医療機関で働く場合この医療機関には刑法上の守秘義務があることを認識しておく必要がある。
国病のスタッフは優秀だがここの法律顧問はいまいちだなぁ。