やまぐち性暴力相談窓口について

2025/6/2

                                                              八木 謙

5月27日(火)山口県男女共同参画課より山口県内の各産婦人科医療機関宛に依頼があった。やまぐち性暴力相談窓口「あさがお」への協力のお願いである。患者が性暴力被害医者だった場合、「あさがお」に電話し、あさがおの到着を待ち診察。患者の体から証拠採取する。証拠物は「あさがお」に預けるというものだ。この「あさがお」からの依頼を受けるべきか否か考察する。結論から言いますと私はこのあさがおからの協力要求には賛同出来兼ねます。

理由:

例えば私が警察より前に殺人現場に通りかかったとしよう。死体の側の落ちていたタバコの吸い殻をハンカチに包んでポケットに入れた。数か月後、これは死体の側に落ちていた物です。これに犯人のDNAが付いているかもしれませんと言って警察にそれを提出したとしてそんなものに証拠能力はない。冤罪を被せようとして憎いやつの吸い殻を警察に提出したかもしれないのだ。警察が死体と死体の側の吸い殻に触る前に写真に撮りその吸い殻を証拠Aとして保管したのなら証拠能力を持つ。

被害者の膣内から取った証拠物も同じことだ。警察が被害者を産婦人科に連れてくる。内診台の横に女性警察官が付いて警察が持ってきた容器に検察が持ってきた綿棒で検体を取る。子宮口、後膣円蓋、膣の入り口、等々女性警察官の言われるままにそれらを採取する。採取後、これらの検体は私(八木)から警察の所有物となりました。という書類にそれぞれサインする。これでこれら証拠物は私の基を離れ警察のものとなる。以後それら採取物と私は一切かかわりはない。

だが、警察を通さず「あさがお」が証拠物を保管した場合、この証拠物の法的持ち主は「あさがお」か、採取した医師か、被害者本人か。まだ警察の手に渡っていないとき「採取した医師」がその証拠物の責任者であると考えるのが妥当であろう。後日被害者本人が警察に届けると決めた場合「採取した医師」がこの証拠物は私が採取しましたと警察に証言する必要が出てくる。あるいは裁判となったとき証言台に立つ必要が出てくる。

  確かにこの相談窓口は泣き寝入りを決めた被害者に対する経済的支援精神的支援として役に立つだろう。しかし、警察に行こうと考えていた被害者がこの制度のことを知り警察より「あさがお」に支援をあおぐことを選んだら、警察で色々聞かれるより警察に届けたのと同等の支援を「あさがお」から受けることができると知ったら、後者を選ぶ者が多く出てくることは間違いない。後日警察に届ける決心をしたとしても警察の初動捜査に遅れがでる。事件後すぐであれば事件現場で採取できた証拠物も得られない。

このようにこの制度にはマイナス面も多い。この制度の功罪は半々なのである。

男女共同参画課の冷凍保管庫に信憑性はあるか:

 誰かが山口県男女共同参画課の倉庫に侵入して冷凍保管庫の証拠物に異物を混入したら、混入物は精液である必要はない唾液を混入させたとしてもDNAは検出出来る。警察の保管と同等の管理は出来ているのか。

嘘は見抜けるか:

日本の警察は究めて優秀である。これを騙すことは難しい。しかし男女共同参画窓口なら騙しやすい。レイプ被害者と名乗る女性が来る。男女共同参画窓口ならそれをそのまま受け入れるだろう。警察は違う、被害者から詳細を聞き、それに該当するか否か判断する。夫による不同意性交罪は成立するか。岩国警察署の性暴力課のトップとこの問題について話してみた。回答は場合によるというものであった。つまり成立することもあり得る。例えば妻の体に暴行の証拠があれば認められるかもしれないということである。以前の法では夫婦間の強姦罪は認められなかった。法文の中に姦淫されたものという文言が入っていたからである。夫婦間で姦淫は成立しない。夫婦間でも傷害罪、殺人罪は成立する。法が改正され強姦罪が不同意性交罪という用語になった。妻が、あの夜私は同意していないのに夫が性交した。不同意性交です。夫を逮捕し、私の人工妊娠中絶を警察の費用でお願いしますと訴えた場合、警察は承知するか。手術が済んだあと夫への訴えは取り消せばいいのだ。警察は厳しく捜査した上でこれはレイプに相当すると判断しなければこの妻の言う通りにはならない。男女共同参画センターならどうか。被害者からの訴えなのだから手術費用は男女共同参画センターが出しますと言うのではないか。

以前ベトナム人女性がカンジダ膣炎で来院した。1週間後にもう1度治療が必要だと言って帰した。1週間後に来たとき診断書を書いてくれと言った。1週間仕事を休んだ。1週間の休みが必要だったという診断書が欲しいという。そんな診断書は書けないと言って帰した。午後、山口県男女共同参画課の二人とそのベトナム人女性が来た。男女共同参画の二人は湯田から岩国までわざわざやってきたのである。二人は診断書を書けと迫る。私は仕事を休めなどとは言っていない、そんな診断書は書けないと言った。教育実習という名目で日本にやってきて安い賃金で働かされているのだろう。休みたいのは分かるがそれは本人と雇い主との問題である。男女共同参画課は可愛そうな女性から訴えられればことの正否に関係なくその女性の力になるという姿勢である。そういう組織体制なのだから仕方ないが、彼らの言う事をそのまま信用できない。

私は警察活動協力医として山口県警に登録してある。警察への協力はできる限りしている。しかし、警察不在での犯罪の証拠物採取には応じないという私の主張は当然であると考える。