将来のこの国の産科医療に助産師は不可欠か

八木 謙 (山口県・玖珂郡医師会)


 看護師に産科医療の手伝いをさせた事が違法だとして、助産師不在の産科医療機関に警察の捜査が入るという事件が頻発し、分娩を廃止する産婦人科医院が続出している。一方、今後、分娩施設の浮沈は助産師をどれだけ確保できたかによって決まるという考え方から、生き残りをかけた産科医療機関は助産師の確保に躍起になっている。
 この現象は、将来のこの国の産科医療を良い方向に向かわすだろうか。
 産科医療に看護師を介入させる事が違法か違法でないか、その論旨は別の雑誌で述べた。紙面が足りないのでここでは医師と看護師で行う産科医療は法的に問題ないという前提の基に話をすすめる。
 産科医のパートナーを助産師のみだけでなく広く看護師全体から採用するべきである。そのことで、より優秀な人材を確保できる。特に、看護大学出の人材が産科医療現場の核となって活躍してくれることが望まれる。助産師の国家資格は医師がいない場所(医療現場以外)での助産に有用なだけである。今後そのような分娩が多くあるとは思えない。医師の指示下で高度な産科医療の助手を務める事のできる、真に実力のある人材の養成が急務である。この国の助産師の数は2万5千人。対して看護師の数は120万人。この多い分母の中から優れた人材を産科医療現場に取り込まなければならない。
 法律問題はさておき、真に優秀な人材の確保に取り組まないと、20年30年先の産科医療現場は、他科に遅れを取ってしまうことは必至である。